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米国逆イールド環境下の投資戦略

米国逆イールド環境下の投資戦略
●景気後退のシグナルとされる「逆イールド」が発生 先週の火曜日(3月29日)の米債券市場で2年物の国債利回りが一時、10年債を上回る「逆イールド」が発生。2019年の夏以来、約2年半ぶりに出現した。一般的に逆イールドの出現は「景気後退のシグナル」とされており、米連邦準備理事会(FRB)米国逆イールド環境下の投資戦略 が今後金融引き締めに動くことで景気が冷え込むという展開を投資家が早くも織り込む動きをみせていると言われる。 逆イールドを測定する最もポピュラーな指標が2年債と10年債との長短金利差だ。通常、債券の利回りは年限が長くなるほど返済リスクを踏まえて金利は高くなる。将来の経済や物価が不確実で見通せない分、高めの利回りが求められるからだ。なので、通常は1年債よりも3年債、3年債よりも10年債、10年債よりも20年債の方が利回りは高くなる。 ●金融正常化に向け短期金利は上昇する一方、景気不透明感で長期金利は上昇しにくい ただし、短期金利は足元の金利動向の影響を受けやすく、長期金利は長期的な景気見通しの影響を受けやすい。現在の債券市場では、FRBによる金融正常化の動きで足元の金利が上がっているため短期金利は上昇しやすく、一方の長期金利はウクライナ情勢や商品価格市場の高騰などがもたらす不透明感により景気見通しに自信が持てず金利が上がりにくい。 実際、パウエルFRB議長は次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される5月に0.5%の大幅利上げに踏み切る可能性を示唆したことで、政策金利の動向に敏感な2年債利回りの上昇に弾みが付いており、3月に入ってから1.0%程度上昇した。一方、米長期金利の指標になる10年債利回りは3月に0.6%程度上がったが相対的に上昇幅は限定的だ。 そうした結果、3月29日(米国逆イールド環境下の投資戦略 火)に2年債の利回りが2.39%あたりで10年債の利回りをやや上回り、さらに4月1日(金)には2年債が2.46%(前日比+0.13%)、10年債が2.38%(米国逆イールド環境下の投資戦略 同+0.08%)となり、長短金利差が-0.08%という明確な逆ザヤ現象が生じたのだ。 ●逆イールドが発生したからと言って、今の日本の株式市場にマイナスとはならない 2年債と10年債の利回り逆転は、過去においても実際の景気後退の1~2年前に発生しており、市場参加者の関心が高い指標だ。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に一時発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。 逆イールド現象は確かに景気後退のサインであるが、これが直ちに今現在の株式市場にとってマイナスか、と言えばそういうことにはならない。米国において1960年代半ば以降、2年債と10年債の逆イールドは8回出現した。最初に逆イールドが発生した後、S&P500指数が天井を打つまで平均で18ヶ月間の時間がかかっており、その間のパフォーマンスは+19%となっている。 ●FRBが現在重視しているのは短期の金利差 ところで、FRBは現在の米景気や雇用環境の強さを強調しており、2年債と10年債の利回り逆転ではなく、より短い年限における債券の動きを注視している。そのきっかけは2018年だ。トランプ政権時代、米中貿易摩擦を背景に2年債と10年債の金利差が急激に縮小し、逆イールド騒ぎが起こったときだ。 この時FRBは「長期金利を物差しにした金利差は景気予測の指標に適さない」と述べ、「短期の金利差が重要だ」と主張した。具体的には「18カ月先の3カ月物先物金利」と「3カ月物国債利回り」の差だ。パウエル氏はこの2つの金利水準について「もし逆転すれば、それは景気が弱いことを示唆しており、FRBが利下げに向かうことを意味する」との見解を表明した経緯がある。 それでは今、この短期金利差はどうなっているのだろうか? 実は足元で2%超に広がっており、2年債と10年債の逆イールドとは対照的である。3月の雇用統計は好調、失業率は3.6%とコロナショック前の2020年2月の3.5%だった完全雇用に迫っている。「景気後退のリスクは小さい」とするFRBにとって一般論的な逆イールドが発生しても、それは正しい警告にはならないことを示す格好の材料といえる。 ●2023年の春~秋頃まで上昇相場が続いた後、「逆金融相場」に突入する可能性が高い ここまで書いたが、皆さんの関心は「この先の日本のマーケットはどうなるのか? 」だと思う。もちろん、FRB流に言えば「短期的には気にするな」であるが、これまでの経験則を当てはめると、昨年春から始まった業績相場がテーパリングというガタガタする局面を経て、ようやくマイルドな局面に戻りつつあるが、上昇相場が続くのは2023年の春~秋頃までということになる。 その頃には米国の政策金利は3%前後まで上昇し、金利のピーク局面手前でクラッシュが始まる「逆金融相場」に突入する可能性がある。そこからは景気減速を伴って「逆業績相場」がやって来る。要するに2023年の半ば前後から「逆金融相場」が始まり、2024年初頭には「逆業績相場」が来る、という見立てを私はしている。そして経済立て直しのために再び金融緩和に転じて、2025年頃から「金融相場」に戻る。 このシナリオはかなり大雑把なものであるが、マーケットは常に変化してゆく。その変化にきちんと対応した投資行動が取れるかどうかが個人投資家にとって重要だ。なので、個人投資家の皆さんにおいてもある程度、自分の見通しを持っていた方がいいと思う。 今後、都度、マーケットサイクルについては言及していきたい。 ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

景気後退懸念で逆イールド発生

要点:現在、一部の売られ過ぎた銘柄や、第5世代移動通信システム(5G)、オートメーション、ロボティクス、スマート・モビリティ、コンシューマーエクスペリエンスといったテーマに長期的価値が浮上しつつある。また、中国株式のポジションが我々の戦略的資産配分を下回っている投資家には、中国市場に分散投資を行う機会であると考える。中国市場は割安で、売られ過ぎであり、年後半にかけて景気回復が鮮明になってくる可能性が高いと考える。

欧州の天然ガス確保に向けた緊急計画の始動は、安全保障時代の到来を示唆

要点:国際社会の不信という新たな環境では、政府と企業は、効率性や価格よりも安全保障と安定性にますます重きを置く可能性がある。投資家にはこの新たな現実に備えることを勧める。

景気後退懸念で逆イールド発生

米国の経済指標は、労働市場その他の領域が堅調であることを引き続き示唆している。3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比43.1万人増となり、1月・2月分は合計で9.5万人上方修正された。その結果、1-3月期の就業者数の伸びは170万人近くに達し、月平均で約56.米国逆イールド環境下の投資戦略 2万人増となった。3月の失業率は2月の3.8%から3.6%に低下し、労働参加率は62.4%に若干上昇した。いずれもパンデミック発生以来最も良好な数値となった。平均時給は前月比0.4%増、前年同月比5.6%増と堅調な伸びを示した。さらに広くみると、アトランタ連銀が最新の経済指標を元に推計する国内総生産(GDP)成長率のリアルタイム予測「GDPナウ」は、過去数週間の経済活動が上向いていることを示唆している。

逆イールド発生から景気後退開始までの時間差は長く、ばらつきも大きい。米国の直近過去10回の逆イールド局面のうち3回は、その後2年以内に景気後退が発生していない。逆イールド発生後に景気後退が始まった事例でも、その時間差はまちまちである。景気後退は逆イールド発生から平均すると21カ月後に始まっているが、開始までの期間は9~34カ月とばらつきが大きい。また、景気後退の予兆としてどの年限が最も的確であるかは不明確であり、投資家が不必要に景気後退を警戒する可能性もある。特に5年/30年国債のイールドカーブは景気後退のサインとしては的中率が低く、1994年の逆イールド発生後に景気後退は起きておらず、逆に2008年の景気後退は予測できなかった。さらにまた、他の年限間の形状は比較的スティープな(右肩上がりの)状態が続いており、特に3カ月/2年国債の利回り格差は現在178bpと過去最高水準に近い。

逆イールドは、株式の売りシグナルを発しているわけではない。1976年以降、S&P500種は2年/10年国債の逆イールド発生後も平均してその後3カ月で2%、6カ月で5%、12カ月で14%、24カ月で22%のリターンを上げている。このパターンは2019年8月に最も顕著となり、一時的に逆イールドが発生したものの株式市場のリターンは堅調に推移した。新型コロナウイルスのパンデミックにより米国経済が打撃を受けるまで、株式市場は上昇傾向を辿り、景気後退は発生しなかった。

誤警報のリスクは中央銀行による過去10年に及ぶ金融抑圧によっても高まったと見られる。米国長期国債の利回りは、FRBや他の中央銀行が大量の債券を保有したことにより低く抑制されてきた。こうした介入の効果は他の要因と切り離して把握することは難しいが、量的金融緩和により逆イールドが発生しやすくなり、シグナルとしての信用性が低下した可能性はある。

本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年4月4日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年4月5日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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